終電を逃してしまったある日。
タクシーで帰るか・・・と、仕方なく乗り込みドアが閉まるその瞬間、
するりと小さな蛾が一匹入り込んでピタッと窓に・・・
「お客さん、どこまで?」
「あ〜ええっと・・・」
蛾が気になって気になって上の空。
タクシーは快調に走り出したものの気が気じゃない。
見たくないけど見ちゃう。
だって目を離して視線を戻したとき、いなくなってたら怖いじゃないですか!!
やだ、どこいっちゃたの?どこ? みたいな。
窓を開けようか・・・いや、その衝撃で飛ぶかもしれない・・・
ヘタに刺激しないほうがいい・・・
息を殺し、気配を消し、ひたすら蛾を見張りながらの15分。
「着きましたよ」
運転手さんの声と共に身動きひとつ取らなかった蛾が
開いたドアと共にすぅ〜っと飛んで行きました・・・
タダ乗り・・・羽ついてんだから飛びなよ・・・
佐藤